風信 14
木の芽草の芽あるきつづける (山頭火)
from 2007 note
●暑中見舞いもうしあげます
あんなに大柄なのに
あんなに密集してるのに
ひまわりの花はちっとも暑苦しく感じない
ちから尽きるまで、いつも真正面から
太陽に向き合っているからだろう
炎天下、自転車を漕いだ
木陰で少し休むと噴出す汗が気化熱を奪い
心地よいやさしい涼しさを感じる
物理の応用もここぐらいまでで
良かったんじゃないかと思う
近代って、自然をも、したがって人間をも
対立概念としか捉えてこなかった
人間の文化の集大成だよ、まったくもう・・・
対立からは敵対・疎外しか生まれないのに・・・
●発作的に秩父まで行って川にとびこんでしまいました
流れに身を任せて自分の身体で川くだり
川面から周囲を眺める視線が新鮮…
樹木のあいだを生き物みたいに浮遊する木漏れ陽…
空のスクリーンを移りゆく雲…
トンボが流木だと思って頭に止まったり…
ささやかだけど川面を流れる風のささやき…
遊んだあとの「けだるさ」が心地いい
●目の前を飛んでいた蝉の動線が
直角に折れて地上に落下した
しばらくのあいだ、ばたばたして
その短い一生が終わった
そんなに悪くなかったよな!
いろんな出会いも悪くなかったよな!
と思えたのだろうか?
良かった!と言えないまでも…
夕方、駅のホームと線路のあいだには
もう、そこになにも存在した痕跡さえなかった
蟻んこたちが運んでくれたのだろう
樹木のあいだを生き物みたいに
浮遊する木漏れ陽・・・
空のスクリーンを流ていく雲
川面を流れる風…
そうして水に運んでもらえたらいいな…
海の底まで…
●生物なんだから
身体なんだから
無意識なんだから
観念なんだから
階段を上がったり下がったり
なんと重層的な生を生きている
ふと気がつくと逸脱している
原因はわかってるんだ…
その逸脱が、かろうじて生を支えている
原因はわかってるんだ…
あるがままの水面には過剰がいっぱい写っているんだ
ろうそくみたいなものなんだろう
想えばおもうほど自身をすり減らしてゆく
でもその分、自分の暗闇を照らし出すことができるんだ
灯がともれば、それでいい
たとえ灯がともせなくても、それでいい
そういう在りようしかできないんだから…
そう、ひとつ外すとひとつ崩壊しちゃう軸がある…
●暮れゆく空を見ていると
いろんな形の雲が竜、牛、鯨・・・
いろんなものを連想させながら
ゆったりと変化し流れて消滅・生成されていく
いいな
これでいいんだよね
つくづく思った
息づかいは、ゆったりしてる?
からだは、のびのびしてる?
声は、ちゃんとでてる?
そんなら文句ないよね
●うまく自分を構成できないとき
立ち尽くすしかないとき
いつも思い出す言葉
神よ お与えください
変えられないものを受け入れる心の静けさを
変えられるものを変えていく勇気を
そしてこの2つを見分ける賢さを
(アメリカのアルコール依存症者自主治療協会の祈り)
●むかし、漢方のお医者が
うつむき仕事ばかりしている患者に
『凧を揚げなさい』って処方したそうです
『凧を揚げなさい』いい処方ですね。
空をみあげること
道端にしゃがんでみること
大きな樹のそばにたたずんでみること
あちこち道草をくうこと
夜空には月と星があること
目の前の直線コースばかり見てて
忘れていたみたい
この間バタバタしていて
ちょっと窒息気味だった自分に気がつきました
「明日は明日の風」が粒子となって
僕の身体を透り抜けた感じ・・・
●「昨日今日明日」
なんで「昨日」から始まるんだろう
最初から過去が意識の時間性のなかに繰り込まれてるんだね
今日が終わらないと明日はこない
今日が終わらないと昨日にはならない
今日を生ききらないと明日を生きれない
今日を生ききらないと昨日の轍はない
今を、自分を生きないと今日を生きれない
「昨日今日明日」
もう「昨日」に食いちぎられた「今日」はいらないだろう
「今」は今日からしか始まらない
●この間ずっと自分の身体とだけ向き合っていたような気がする
腰痛という地雷をふまないように
日々の状態を見ながら
その緊張と折り合いをどうつけるかという
今日一日今日一日のその日暮し・・・
痛みの感覚と腰だけが自己主張していて
他の器官は口出しする余裕もなく沈黙・泣き寝入り
怪我をして水も飲まずひたすらうずくまっている猫のよう
生命体のベーシックな姿に回帰した
個性は脳にあるのではなく
身体性のなかにある様な気がする
その個人の身体的な感受性が脳のマザーボードを作ってる
生の身体がどう感じてきたか
生の身体がどんな信号をあげてきたか
そんな身体的な実感にちゃんと付き合うようにしていくしかない
意識はしばしば身体の敵になるから
注意が必要 ・・・
けっきょくヒトは自然性を脇道に封じ込めながら
脳のなかで生きるようになった生物なのかも・・・
タンポポはお日様いっぱいに受けて元気そのもの
あっちこっちに白い小宇宙がいっぱいある
綿帽子がさらなる宇宙をもとめて飛び出す
踊り疲れた踊子草は
また長い眠りに就こうとしている
鈴蘭の可憐な白い鈴がすがすがしい
どんな音色が出るんだろう・・・
やっと春の陽気で
腰痛という氷が溶けはじめた・・・