風信 16



ちょいと茶店があって空瓶に活けた菊

from 2010 note

上海で想ったこと

第一印象 まず自分自身の身体に戸惑いを感じた初めての旅行。

蘇州の大陸的な大地の底から冷えてくるような寒さのなかで、身体が「庭園も水郷風景ももういいよ、上海に帰って早く熱い風呂にでもつかろうよ」とつぶやき続けていた…
自分のなかの加齢による変化に異和を感じながらも、素直に取り込んでいかなければいけない年齢になったのだろう…

3年ぶりの海外旅行。
それでもやっぱり旅はいいな、自然に元気になる
非日常的な時空間に触れると複眼的にいろんな自分、いろんな時間性を見ることになるからアドレナリンが大量分泌されて自然強制的に活性化されるんだと思う

旅行中は上海が日常で日本が非日常
帰国すると日本が日常で上海が非日常…
生活が日常?仕事が非日常?…

東京よりも若干寒い。黄砂なのか、スモッグなのか、町全体が霞んでいる。町中のいたるところで古い住宅街の取り壊し、その横でビル建設中…・そのほこりで霞んでるのか?と思いたくなるほど。(それの影響か?喉と鼻の気管に何か引っかかっているような違和感が上海以来いまだに残っている…)

5月の上海万博に備えて見せたくない部分を削除しているんだろうな、国家の面子。

来年着たら街はすっかり様変わりしてるだろうな。街そのものがつぱしってる感じ、ブレーキという概念そのものがない感じの、ブレーキがかからないほどの進歩のスピード、この勢いに生活・思考がついていけるのだろうか?

日の当たらない古い住宅郡、昼過ぎ、陽だまりで椅子を並べて日光浴している人たち、暗く狭い住宅通路から椅子を持って出てくる人たち。夕方ともなると魚や野菜の食材をいっぱい並べて、暖かい湯気を上げている個人商店のおばさんたち、どれもおいしかった露天の点心や饅頭。街角の自転車修理のおじさんたち。夜、何処からかかっぱらってきたようなキューイを地面に並べて売っていたあやしげな親父。11元で済むような料金を50元と吹っかけていた白タク的なタクシーの運ちゃん、その横で知らん顔している警察官。何処に行くんだろうね、上海(中国)は。

大通りをひとつ裏に入ると大きな魚をぶちきって開き天日乾ししている近所の人たち、その横にはドアもない共同のトイレ、狭い路地に沿って野菜や食料品を並べて売っている人たち。そんな路上であっても市場は活気があっていい!好きな風景だ。リニアカーみたいな上海のスピードは清潔な街づくりとともに生活のにおいも古い住宅街に残っている人間臭さもあっという間に吹っ飛ばしてゆくのだろう。

中国4000年の食文化の蓄積はすごい。路上の売店からそれなりの酒店・飯店、こんな僕でも味へのこだわりを感じさせられるほど。上海蟹もおいしかった!身も味噌も瀬戸内の僕たちが「チンメー」と呼ぶ沢ガニの味によく似ていた。

蘇州、「月落ち鳥啼いて霜天に満つ...」の寒山寺、南門付近に架かる楓橋でちょっとした水郷風景、庭園を散策、雪が舞い寒くて、我々年寄り連中は早々と上海に退散(なにはともあれ温かい風呂に入りたかった)、なにか無性に日本食が食べたくなって(わずか3~4日の滞在でこんなこと初めて…ずっと現地主義だったのに)日本料理店へ。

う~~ん、加齢に伴う心身の変化、今回の旅行の一番のインパクトはこれに尽きるかも…
 

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